検察のクーデター?

小沢一郎の周辺が、にわかに慌ただしい動きを見せてきた。
東京地検特捜部は、15日夜、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で小沢一郎の元私設秘書で陸山会の会計事務担当だった民主党石川知裕衆議院議員と、後任の会計事務担当だった小沢一郎の元私設秘書、池田光智を逮捕。
さらに西松建設の違法献金事件で逮捕、起訴されていた元会計責任者の大久保隆規も逮捕した。

16日は民主党にとって与党になってはじめての党大会が行われる予定になっていたこと、さらに18日からは通常国会が始まることを考えれば、今回の地検特捜部の行動は露骨な<民主党潰し>と見てもよさそうだ。

私は小沢一郎という政治家が好きではないし、自民党的体質でもある政治とカネの問題にはうんざりしていることもすでに書いたとおりだ。
だから、今後もし検察の手が小沢本人まで伸びたとしても、それはそれで構わないと思っている。そうすることで今の民主党政権にも漂っている薄汚れた空気がすっきりと晴れるのならば、望むところである。

しかし、そのことと検察という権力が己の威信を示すために暴走しているのを黙って見逃すのとはまったく別の問題だ。

検察はこれまで小沢本人に事情聴取しようとしていたが、小沢が承知しなかった。そこで検察は本丸を責めるために外堀を埋めていくように小沢の側近に狙いをつけて縄をかけていった。
すなわち、たとえ小沢本人が不承知であろうと検察からは逃れることは出来ない。民主党が小沢の首を黙って差し出していれば、今回のようないかにも強引な逮捕劇はなかっただろうと検察は言いたいのだ。これは、お上にたてつく者はたとえ政権与党であろうとも容赦しないということであり、場合によっては現政権が大打撃を受け、民主党が分裂するなり、連立政権が瓦解することがあっても構わないという意思表示でもある。
つまるところ、これは民主政治に対する傲慢な挑戦なのだ。
そして民主政治に対する挑戦をしてきたということは、検察がケンカを売ろうとしているのは民主党だけではなく、国民に対してでもあるということを忘れてはいけない。

われわれは自民党独裁による政治が50年以上も続いたことで腐りきってしまったことに嫌気がさし、先の総選挙でNOを突きつけた。
政権交代を実現させたのは国民であり、民主主義が独裁に勝利したことに他ならない。

だが、顔の見えない検察という権力は、いっさいの民主的な手続きを踏まず、無言のまま新しい政権にダメージを与えて民主党と民主主義を支持する国民に対して圧力をかけてきたのだ。

私は陰謀論は好まないが、昨日夜からはじまった検察特捜部の行動は、民主党による政府を望まない勢力とどこかで結びついたクーデターの始まりなのではないかと勘ぐりたくなる。

はたして検察は、小沢一郎の首を取れば気がおさまるのだろうか。
小沢を失ったとしたら、民主党はどうなるのか。
民主党ががたつくことによって、結束が固いとは言い難い連立政権はどうなるのか。
もしこの陰謀を企んだ人間がいるとしたら、今頃ワクワクしながらことの成り行きを見守っていることだろう。

われわれとしては、たとえ民主党が大ダメージを受けたとしても、自分たちの意志で選んだこの政権が不当な形で発言力を失い、国を舵とる機能を奪われることがないように注視していかなければならないと思う。